空き家の改修に使える補助金は、多くの自治体が用意しています。ただし「いくらもらえるのか」は制度ごとに違い、全国共通の金額があるわけではありません。同じ県の中でも、市町村によって補助の有無も金額も条件もまったく異なることがあります。
この記事では、補助金の金額がどう決まるのかという仕組みを押さえたうえで、よくある制度の型、申請できる人や物件の条件、申請の流れ、受け取ったあとの注意点、見落としやすいポイントを整理します。ここで紹介するのは一般的な考え方であり、実際の要件や金額は、必ず物件のある自治体の最新の募集要項と窓口で確認してください。
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金額は「補助率」と「上限額」で決まる
補助金の額は、多くの場合「対象となる工事費の○分の△、ただし上限□万円まで」という形で決まります。つまり、次の2つを見れば、おおよその金額が分かります。
- 補助率:対象経費の2分の1、3分の1といった割合
- 上限額:補助率で計算した額がいくら大きくても、ここで頭打ちになります
例えば「補助率2分の1、上限50万円」の制度で、対象工事費が80万円なら補助は40万円、対象工事費が200万円でも補助は50万円です。工事費が大きいほど得をするわけではない点に注意してください。
なお、ここで挙げた数字は仕組みを説明するための例であり、実際の補助率・上限額は自治体ごとに異なります。年度によって変更されることもあるため、必ず最新の募集要項でご確認ください。
補助率型のほかにある金額の決め方
補助率と上限額で決まる形が一般的ですが、制度によっては次のような決め方をしているものもあります。
- 定額型:工事費にかかわらず、条件を満たせば決まった額が支給されるもの
- 加算型:基本の補助額に、移住者や子育て世帯であること、市内の事業者に発注することなどの条件で上乗せがあるもの
- 下限額のあるもの:対象工事費が一定額に満たない場合は、そもそも申請できないもの
加算の条件は、居住する人を対象にしていることが多く、賃貸目的の場合は加算の対象外になることもあります。募集要項では、基本の金額だけでなく、加算の条件と自分が当てはまるかどうかまで確認しておきましょう。また、端数の扱いや、消費税を対象経費に含めるかどうかも制度ごとに異なるため、概算を出すときは要項の記載に沿って計算してください。
「対象経費」に入るかどうかで金額が変わる
意外と差が出るのが、工事のどこまでが補助の対象になるかです。制度によっては、次のような線引きがあります。
- 構造や安全にかかわる工事(耐震、屋根、外壁)は対象になりやすい
- 水まわりの改修や内装は、制度によって対象・対象外が分かれる
- 家具・家電の購入費や、残置物の処分費は対象外のことが多い
- 市内・町内の事業者が施工することを条件にしている制度もある
見積書の内訳が対象経費と対応していないと、申請時に差し戻されることがあります。施工業者に「補助金の申請に使う見積もり」であることを伝えておくと、内訳を分けて作成してもらえる場合があります。
注意したいのは、自分で材料を買って施工するDIYの部分です。多くの制度は事業者に発注した工事を前提にしているため、材料費だけでは対象にならないことがあります。また、同じ工事の中に対象の部分と対象外の部分が混ざっていると、対象外の部分を差し引いた金額で補助額が計算されます。「工事費の総額」ではなく「対象経費の合計」で概算を出す習慣をつけると、見込みと実際の差が小さくなります。
見積もりを依頼するときは、工事の場所ごと、工事の種類ごとに金額を分けて書いてもらうよう頼んでおくと、仕分けがしやすくなります。「改修工事一式」のように一つにまとめられていると、どこまでが対象経費なのかを窓口で判断できず、再提出を求められることがあります。
補助額を自分で概算する手順
募集要項が手に入ったら、窓口に相談する前に、次の順番で概算を出してみると、制度を使う価値があるかどうかの見当がつきます。
- 見積書の項目を、要項に書かれた対象工事と対象外の工事に仕分ける
- 対象工事の金額を合計し、消費税の扱いや下限額の条件を確認する
- 対象経費の合計に補助率を掛ける
- 上限額と比べて、低いほうを補助見込み額とする
- 工事費の総額から補助見込み額を引いて、自己負担額を出す
例えば、仮に見積もりの総額が150万円で、そのうち対象工事が100万円、対象外が50万円だったとします。補助率2分の1、上限50万円の制度なら、補助見込み額は50万円、自己負担は100万円です。これが上限30万円の制度なら、補助見込み額は30万円、自己負担は120万円になります。数字は仕組みを示すための仮の例ですが、このように「総額」ではなく「対象経費」と「上限」で見ていくと、補助金に期待しすぎることを防げます。最終的な金額は、審査を経て自治体が決定します。
よくある制度の型
空き家に関する支援制度は、大きく次のような型に分かれます。自分の目的に合う型を探すと、見つけやすくなります。
- 改修費の補助:居住や賃貸に供することを条件に、改修費の一部を補助するもの
- 解体・除却の補助:老朽化した建物の取り壊し費用を対象とするもの
- 移住・定住の支援:転入者が住むことを条件に、改修費や家賃を支援するもの
- 空き家バンク連動型:空き家バンクに登録した物件の成約時に支援するもの
空き家投資で賃貸に出すことを考える場合、中心になるのは改修費の補助です。ただし、改修費の補助は「自ら住むこと」や「移住者が住むこと」を条件にしているものが多く、賃貸を対象に含むかどうかは制度によって分かれます。解体・除却の補助は、建物を残して活用する場合には使えないのが一般的ですが、老朽化した建物を取り壊して土地として売る、という出口を考える場面では選択肢になります。移住・定住の支援は、入居者側が受ける制度であることが多く、物件の募集の際に「この地域ではこうした支援がある」と案内できれば、入居者を集める材料になる場合もあります。
このほか、空き家に限らず住宅全般を対象にした耐震診断・耐震改修の補助、省エネ改修や断熱改修の補助、バリアフリー改修の補助などが、空き家の改修にも使える場合があります。国の制度を自治体が窓口になって実施しているものもあれば、自治体独自の制度もあります。賃貸住宅の空室対策という切り口で探せる制度については、空室対策に使える補助金|賃貸住宅の改修で確認したい制度と注意点でも整理しています。
制度の探し方は空き家の改修に使える補助金・助成金と、自治体制度の探し方で詳しく扱っています。
申請できる人・物件の条件の例
金額の前に確認したいのが、そもそも自分と物件が対象になるかどうかです。条件は制度ごとに異なりますが、よく見られるものとして次のような例があります。
- 申請者の条件:物件の所有者であること(または所有者の同意を得ていること)、税金の滞納がないこと、などが求められることがあります
- 物件の条件:一定期間以上使われていない空き家であること、建てられた時期、空き家バンクへの登録の有無などが条件になることがあります
- 使い道の条件:自ら住むこと、賃貸に出すこと、地域の交流拠点として使うことなど、改修後の用途が指定されていることがあります
- 利用期間の条件:改修後、一定期間はその用途で使い続けることが求められる場合があります
特に注意したいのが、取得のタイミングと名義です。所有権の移転登記が済んでいないと申請できない制度もあれば、空き家バンクを通じた取得を条件にしている制度もあります。「取得してから探す」のではなく、取得を検討している段階で、物件のある自治体の窓口に相談しておくと、取得の進め方そのものを制度に合わせて調整できる場合があります。
名義や相続の整理が済んでいない場合
空き家では、所有者が亡くなったあと相続の手続きが済んでいない、共有名義で所有者が複数いる、といったケースがめずらしくありません。補助金の申請では、所有者であることや、ほかの所有者の同意があることを書類で示すよう求められることがあり、名義の整理が済んでいないと申請そのものができない場合があります。相続登記や名義の整理は、司法書士などの専門家に相談しながら、補助金の募集時期に間に合うよう早めに進めておきましょう。取得前の物件であれば、売り主側でどこまで整理してもらえるかも確認しておくと安心です。
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申請の流れと、最も大切な注意点
一般的な流れは次のとおりです。
- 自治体の窓口・ホームページで制度と募集期間を確認する
- 要件(所有者か、居住するのか貸すのか、建築年、着工時期など)を満たすか相談する
- 施工業者から見積もりを取り、必要書類をそろえて工事の前に申請する
- 交付決定の通知を受けてから、工事に着手する
- 完了報告(写真・領収書・請求書など)を提出し、審査後に入金される
最初の相談では、物件の所在地、現在の所有者、建てられたおおよその時期、改修後に住むのか貸すのかといった用途、予定している工事の内容と時期を整理しておくと、話がスムーズに進みます。見積書や物件の写真があれば、対象になりそうな工事の範囲も具体的に相談しやすくなります。
最も多い失敗が、交付決定の前に工事を始めてしまうことです。多くの制度では、着工済みの工事は対象外になります。「とりあえず直し始めて、あとから申請する」は通らないと考えておいてください。
また、補助金は原則として後払いです。工事代金はいったん自分で支払う必要があるため、補助金をあてにした資金繰りにしないことが大切です。
よく求められる書類の例
必要な書類は制度ごとに違いますが、申請時には申請書のほか、工事の見積書、工事前の写真、物件の位置図や平面図、登記事項証明書などの所有を確認できる書類、納税の状況を確認できる書類などを求められることがあります。完了時には、工事後の写真、請求書や領収書の写し、契約書の写しなどが求められるのが一般的です。工事前の写真は、工事が始まってからでは撮り直せないため、施工業者とも共有して、同じ位置・同じ角度で前後の写真を残しておくと安心です。
多くの制度は、所有者が自分で申請することを想定しています。書類の作成に不安がある場合は、窓口で記入の仕方を確認したり、補助金の申請に慣れた施工業者に見積書や写真の準備を手伝ってもらったりする方法があります。申請の代理については制度ごとに扱いが異なるため、事前に確認してください。
スケジュールの考え方
自治体の補助金は年度ごとの予算で動いていることが多く、年度の初めごろに募集が始まり、年度内に工事と完了報告を終えることを求められる場合があります。申請から交付決定までにも一定の期間がかかるため、工事の時期と入居募集の時期を逆算して計画することが大切です。年度末に近い時期に物件を取得した場合は、次の年度の募集を待つほうが現実的なこともあります。
申請でつまずきやすいポイント
- 募集期間を逃す:受付期間が短い制度や、予算に達した時点で締め切る制度があります。年度の初めに自治体のお知らせを確認する習慣をつけましょう
- 契約や着工の日付:工事の契約日や着工日が交付決定より前になっていると、対象外とされることがあります。契約のタイミングも窓口に確認しておきます
- 工事内容の変更:申請後に工事の内容や金額が変わる場合、変更の届け出が必要になることがあります。勝手に変更すると、補助の対象外になるおそれがあります
- 支払いの方法:現金払いで領収書がない、名義が申請者と違うなど、支払いの証明が不十分だと完了時の審査で問題になることがあります
受け取ったあとにも注意点がある
補助金は、入金されたら終わりではありません。制度によっては、受け取ったあとにも守るべき条件が付いています。
- 決められた期間、指定された用途で使い続けること
- 期間内に売却や用途の変更をする場合は、事前に届け出ること
- 条件を守れなかった場合は、補助金の全部または一部の返還を求められる可能性があること
- 入居状況などの報告を求められる場合があること
空き家投資では、状況によって「貸す」から「売る」へ方針を変えることもあります。補助金を受けた物件は、その変更に制約がかかる場合があるため、出口の選択肢まで含めて受けるかどうかを判断しましょう。条件の詳細は、交付決定の通知書や要項に書かれていることが多いため、受け取った書類は大切に保管してください。
補助金ありきで物件を選ばない
補助金は、予算の上限に達すると年度の途中でも受付が終了します。また、抽選や先着順の制度もあります。「補助が出る前提」で収支を組むと、受けられなかったときに計画が崩れます。
補助がなくても成り立つ収支を先に作り、受けられたら前倒しで次に進める、という順番が安全です。収支の組み立て方は利回りの計算方法|表面利回りと実質利回りの違い、工事費そのものの考え方は賃貸に出す前にどこまで直す?必要最小限のリフォームの考え方、項目別の金額の目安はボロ戸建てのリフォーム費用はいくら?項目別の目安と抑え方をご覧ください。
また、補助金を使うことで、かえって工事費が上がるケースもあります。対象になる工事の仕様が決められていたり、指定の事業者に依頼する必要があったりすると、補助がない場合より割高な工事になることがあるためです。「補助を受けた場合の自己負担額」と「補助を使わずに必要最小限で直した場合の金額」を比べて、手元に残るお金が多いほうを選ぶ、という視点を持っておきましょう。
補助金を使うかどうかの判断基準
補助金を使うかどうか迷ったときは、次の点を一つずつ確認してみてください。
- 補助を受けた場合の自己負担額は、補助なしで必要最小限に直した場合より本当に少ないか
- 交付決定を待つ期間、入居募集の開始が遅れることによる家賃の機会損失はどの程度か
- 用途や利用期間の条件は、自分の運用方針(貸し続けるのか、いずれ売るのか)と合っているか
- 工事代金を先に支払うだけの資金を、補助金の入金まで確保できるか
すべてに無理なく答えられるなら、補助金は心強い後押しになります。どれかに不安がある場合は、補助を使わずに必要な工事だけを先に済ませ、早く貸し出すほうが結果的に有利なこともあります。補助金は「もらえるかどうか」だけでなく、「計画全体にとって得かどうか」で判断しましょう。
よくある質問
賃貸に出す目的でも使えますか?
制度によります。自ら居住することを条件とするものが多い一方、賃貸として活用する場合を対象に含む制度もあります。事前に窓口で目的を伝えて確認してください。
複数の補助金を同時に使えますか?
同一の工事に対する重複利用を認めない制度が一般的です。ただし、対象経費が分かれていれば併用できる場合もあります。制度ごとの要項と窓口での確認が必要です。
受け取った補助金に税金はかかりますか?
補助金の性質や使途によって取り扱いが異なります。個別の判断は税理士にご確認ください。申告の基本的な考え方は戸建て賃貸の確定申告|不動産所得の基本と経費の考え方でも触れています。
0円や格安で取得した物件でも対象になりますか?
取得価格そのものよりも、所有者であるか、物件が要件を満たしているか、改修後の用途が制度の目的に合っているかで判断されることが一般的です。ただし、取得の経緯や時期が条件になっている制度もあるため、取得前の段階で窓口に確認しておくと安心です。
予算切れや不採択になったら、どうすればよいですか?
その年度の受付が終わっていても、翌年度に同じような制度が続く場合や、追加の募集が行われる場合があります。窓口に次の募集の見込みを尋ねておくとよいでしょう。ただし、制度が続くとは限らないため、待つ間の空室期間や資金の状況も踏まえて、補助なしで先に工事を進めるかどうかを判断してください。補助なしでも成り立つ収支を先に作っておけば、こうした場面でも慌てずに済みます。
まとめ
空き家の補助金は「補助率×対象経費、ただし上限まで」で決まり、金額は自治体ごとに異なります。工事の前に申請すること、後払いであること、受け取ったあとにも条件があること、補助ありきで計画を立てないことを押さえておけば、大きな失敗は避けやすくなります。制度の探し方は空き家の改修に使える補助金・助成金と、自治体制度の探し方をご覧ください。なお、要件や金額は年度ごとに変わるため、必ず各自治体の最新の情報をご確認ください。
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【ご注意】
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の物件・個人に対する税務・法律・会計上の助言ではありません。税金・登記・法令・補助制度などは、物件の所在地や個別の状況、制度改正によって内容が異なります。実際の取引や運用にあたっては、税理士・司法書士・弁護士・不動産の専門家などにご相談のうえ、最新の公的情報をご確認ください。また、本記事内の数値は一般的な例や仮の試算であり、収益や成果を保証するものではありません。
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